「独立・開業」「継承」「雇われ院長」

医師のキャリア設計をサポートする

「独立・開業」「継承」「雇われ院長」

2021年10月7日 キャリアの未来地図 医師のキャリア 0

こんにちは、アイサポート東京の医師専任キャリアコンサルタント・石井美和です。
医師の転職サポートをして20年目になります。
その間、500名以上の医師の常勤転職相談を受けてまいりました。

医師のキャリア設計「独立・開業・継承」


「独立・開業」という選択肢

40代前半の医師の3割ほどは、「開業」という選択肢を、お考えになっていらっしゃるというのを感じます。

その頃になると、同期の先生で開業して成功されている方も複数いらっしゃること。開業時に20年以上のローンを組むこと。医師として一人前と自他ともに認められる経験を積んでいること。

独立・開業を考えるタイミングとしては、とても自然なことです。

お子さんの教育費が重くのしかかる「前」であるのも、思い切った挑戦がしやすいですね。

クリニックの「継承での開業」のメリット

しかし、開業ではいままでの勤務医として経験とは全く異なるスキルが求められます。

面倒かつ複雑な行政手続き、銀行とのやり取り、事業計画、不動産の契約、人材の雇用と育成…。その責任をすべて負ってやっていかなくてはなりません。

病院に勤務していれば、すべて、事務やコメディカルがやってくれていた作業をすべて自分でやるか、一つひとつを誰かに指示してやってもらう必要があります。

「医師」兼「経営者」に、短期間で成らなければならず、なかなかどうして、大変なことです。

ですから、独立開業について調べた結果、
・初期投資が少なくて済む
・既に患者がいて運営の流れができている
ことを大きなメリットとして感じ、「継承案件」と上手く出会えたらいいなぁ…と考える先生は、多いと思います。

継承案件の成功のカギは、「直ぐに動けるかどうか

クリニックが継承先を探している場合、その理由は、
1)オーナー院長が高齢で後継者が居ない。
2)オーナー院長が急な病気で倒れられた。
3)オーナー院長の転居など家庭の事情で閉院せざるを得ない。
4)経営が上手く行かなくなった。

などが考えられます。

そして、継承案件で成功する可能性が高いのは、
2)と3)のパターンです。


1)一番多いクリニック継承のパターン=「後継者不在」

多くの場合は、院長が超高齢で、それに伴い診療時間を短縮し、患者も減少しており、クリニックの設備も古いままが多いのが現実です。継承する際には設備や内装に多額の資金が必要となる上、改修の間はクリニックを閉めるため、既存患者も離れてしまいます。

このパターンの継承では、「新規で開業する場合のコスト及び事業計画」と、よくよく比較して、十分なメリットを感じた場合のみとすべきです。間違っても「とても希少な承継案件なので、早く契約しましょう!」というような業者の言葉を鵜吞みにしないようにしてください。

真新しい・機能的で居心地の良いクリニックが近所にできて、患者を奪われてしまい、結局、移転してやり直すことを考えなければならなくなった…なんてことにならないようにしなければなりません。

2)院長が急に倒れた。3)院長が遠方に転居せざるを得なくなった。

この場合、オーナー院長は本当はこのクリニックを続けたいのですが、断腸の思いで「閉院するよりはスタッフの雇用も守れる継承を…」と考えています。中には、開設2-3年目の真新しく立地も良いクリニックなどもあります。

しかし、このような案件が「いつ」「どこで」出てくるのかは分かりません。そして、継承相手が間に合わなければ、「閉院」してしまうのがこの案件です。

状況としては「早期決断・早期継承」が求められますので、現実的には、「フリーランス医師」として非常勤の掛け持ちで生計を立てている医師。開業を模索して、勤務先の病院にも開業の為の退職の根回しが進んでいたタイミングで、たまたま、条件の良い承継案件に出会った医師。または自分のクリニックは管理医師を別に立てて、継承するクリニックの管理医師を引き受けられる立場のオーナー医師でなければ、このような案件に手を挙げることはできないでしょう。

いずれにしても、「常に動ける(転籍できる)」「ざっくりの事業計画が頭の中で算段できる」状況に自分を置ければ、また、案件に巡り合うまで、2-3年の時間がかかっても良いと考えられる状況であれば、検討したい開業方法ですが、なかなか実行できる先生は少ないでしょう。

4)経営が上手く行かなくなった継承案件

…この場合は、理由がどうあれ、継承することはお勧めいたしません。ごく普通に経営していたのに、経営が傾くという事はそもそもその診療圏に患者ニーズが無かったという事です。また、仮に経営者が経営に関して、めちゃくちゃだったり、別の事業で借金を作っていたとしたら、尚更、どこに、どんな形で負債があるか分かりません。これからはじめて開業しようという、この仕事にすべてを賭けようという医師が手を出すべき案件ではありません。仲介する人には、色々ともっともらしいことを言われると思いますが、近づくべきではないでしょう。

「雇われ院長」だって楽ではない。事業計画の遂行とスタッフの育成は院長の責務。

最後に、雇われ院長という選択肢をお考えの先生への注意点です。

雇われ院長の求人が出る背景としては、
1)既存のクリニックや病院が業務拡大する際の「分院長の求人」
2)医院を運営したい「他業種からの参入」
の2パターンがあります。

1)の場合は、既に実績のある病院やクリニックから、人が派遣されることも多く、新規開業の際の行政手続きや人の確保や初期教育などまるっとお任せできるでしょう。しかし、2)の場合は、資本家は介護施設を運営していたり、まったく領域の異なる事業をしている場合もあります。 クリニック運営のオペレーション、及び、マニュアルなどが整備されているのか?事務職員や看護師の教育は誰が実施するのか?確認しておく必要があります。

また、既に実績のあるクリニックの分院であったとしても、新規のクリニックの場合、半年~1年以内で、院長以外のスタッフがさまざまな理由ですべて入れ替わってしまう…というような話は、よく聞きます。スタッフの定着・育成は、院長が責任を持ってやり遂げなければいけない、重要事項です。クリニックのスタッフに、仕事の使命ややりがいを感じさせ、安全な医療を提供する環境に目を光らせるのは現場長である院長の責務です。 あまりにもスタッフの定着率が悪い
場合は、院長の管理責任・力量が問われることに直結します。

さらに、院長は事業計画の遂行を求められます。「集患は本部がやるので、院長は診療に専念できます」という説明を就任前の面接で聞くと思います。確かにインターネットや様々な手段を利用した広報は本部が行いますが、そうしてやってきた初診の患者さんの「再診」は、院長及び現場の努力に任されています。

「 再診 」を促す。単価を上げるため必要な「検査」を促し、患者の了解を得ること。は、院長の力量であり、再診率、診療単価については、本部としても重要な指標として毎月注視しているところです。

いくら「院長は診療に専念してくれればいい」と言われて入職したとしても、1年たっても、再診が少なく、スタッフも短期離職し、事業計画から大きく後れをとっている状況であれば「院長には不適格」と判断されてしまうでしょう。

雇われ院長にも、オーナーと同じように「絶対にこのクリニックを成功させる」「10年・20年、地域に求められるクリニックの仕組みを作る」という覚悟が求められます。

分院長・雇われ院長から、そのままクリニックを継承できる案件も。

そんなオーナーにも勝るとも劣らない覚悟で、黒字化したクリニックであれば自分ですべてを納得のいく形にしていきたいと思われる先生もいらっしゃると思います。

実は、雇われ院長や分院長求人の中には、院長就任の3-4年後に「継承」して完全独立してもいいですよ。という案件は多くあります。

分院長のやる気を引き出すために、最初から「継承」を謳うケースもありますが、先のことは約束できないので、可能性は十分あるが、敢えて言わないケースもあります。

私の経験としては、母体が病床のある病院ではなく、クリニックや他業種のオーナーであれば、将来の継承が可能な場合が多いので、自分自身のモチベーションを高める為にも、就任前の話し合いで、継承の可能性を確認するのも良いと思います。

キャリアコンサルタント(国家資格)・2級キャリアコンサルタント技能士 石井美和

 

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